我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

大人勝ち

朝稽古の後、平塚駅から湘南新宿ラインに乗り東京へ。今日は友人のプロボクサー嶋田雄大さんの試合の応援のために、年休を取っている。

時間はたっぷりあるゆえ、新宿の紀伊国屋書店と但馬屋珈琲でくつろぐ。

昼食は家内と待ち合わせて岩本町の四川料理巴蜀で麻婆豆腐定食。巴蜀のマーボーは日本一だね。


久しぶりに神田の書店街に。やはりこの街は古きよき東京という風情があるな。

神保町に来ると必ず寄る珈琲店神田伯剌西爾。とてもいい味出しています。今日は囲炉裏のそばに席をとりました。

18時から前座試合開始。熱戦が続く(写真は日本ランカーの杉田純一郎)。

ボクシングはいつも前座から観ている。前座から観ていると、メインイベンターという連中の技術の高さがよくわかる。

嶋田さんの試合はもちろんメイン。比国Sフェザー級5位のマイク・トゥンバガが相手。

すぐに気がついた。いつもの嶋田さんと若干違う。現役選手なので具体的な技術論は避けるが、構えと足捌きの展開のさせ方が微妙に違う。

そう言えば試合前に富山で放映された特集番組を見た小島支部長が、「嶋田さん、疲れ溜まっていますね」と言っていたな。

相手も格下と思われたが、とてもいい選手。嶋田さんの持つ世界ランキングを“ごっつあん”しようという気合が見える。

相手が振るう右の強打はほぼ躱していたが、嶋田さんも良いパンチを当てたのは中盤以降。

明らかに調子が悪い。会場から檄やヤジが飛ぶ。客はダウンやKOを観に来ているのだから、当然といえば当然。

が、嶋田選手はあくまで自分の動きを貫く。悪いときは悪いなりでやるしかない。ここは何を言われようと忍の一字。

中盤以降は的確に当てて行き、何とか試合を良い方向に戻そうとする。が、豪打は出ないまま終了。

結果は嶋田選手の判定勝ち。

試合後は言葉少なに退場。やはり本人も納得がいっていないのだろう。世界戦線に嶋田あり、を印象付けるには不十分だったことは確かだ。

しかしながら、アレだけ調子が悪い中で試合を投げず、途中でムキにならずやり遂げた精神力は特筆に価する。99%の人間は、そこで投げる。

スカッとした勝ち方ではなかったが、やれることを積み上げて大人力を見せ付けた。嶋田選手の“大人勝ち”である。

これは我々武術モノがもっとも大事にせねばならない能力のひとつだと思う。

武術の稽古でも、無理に“ひとカタチ”を付けに行って、貰わなくても良い攻撃を受けたり、しなくても良い怪我をしたりするシーンがしばしば見受けられる。

身を全うするのが武術であるなら、時として“大人勝ち”をすることを学ぶべきである。

え?俺?大人勝ちだらけですよ。

今までの“渡り合い”の場面で全部正味ガチンコの殴り合いだけやっていたら、今頃こうして元気に拳法を稽古していないでしょうナ(笑)