我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

父が遺したもの


今日は、父親とはいかにあるべきか、について書こう。

家内の弟、すなわち私の義弟であるが、こいつがなかなかの男だ。私とは非常にウマが合うのだが、周囲には常に恐怖と緊張感を強いる人間である。

この義弟、体重100キロ超の“腕力家”。身長は私と変わらないが、腕は二回り太い。高校時代、修学旅行の宿泊先にダンベルセットを持ちこんだ、という逸話がある。ついたあだ名がラオウ

あだ名の如く、こいつは物事全てを力で押し通す男だ。得意技は“折る”こと。相手が人間でも機械でも、己の意を貫くためには、邪魔する奴は折る。

主な被害者は、迷惑メールがひっきりなしに入るケイタイ、ネット接続に手間取るパソコン、理屈をこねた末弟・・・etc。

ケイタイとPCは購入後、数日で折られて再起不能。そして、末弟は口論の最中に右ストレート一発で鼻を折られた。

義母は救急病院に駆け込み、ぺしゃんこになった末弟の鼻をみせて涙ながらに「先生、もとの男前に戻るやろうか?」と医師にすがりついたそうな。

ちなみにこの末弟、神戸の街で人相の悪い御仁に「おまえ、ラオウの弟じゃろ!兄貴にやられた仕返しじゃ!」とシバかれたのだとか。重ね重ね、周囲に迷惑な男だ(笑)。

ラオウの攻撃を受けて折れ無かったのは、店の業務用冷蔵庫だけ。店でキレたラオウ、鉄拳を叩きこんだのだが、これは折れなかった。もっとも、鉄の扉が大きく凹んでしまい、「相手が人間だったら・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル 」と周囲の心胆を寒からしめた。 

ことほど左様に荒ぶる魂のままに生きる男であるラオウ。現在の嫁さんとの結婚も“折る”ことがきっかけだったという。

嫁さんであるKちゃんは、若き日のラオウに惚れ、家内の実家のお好み焼屋に毎日のように通っていた。ちなみにKちゃんの実家は三代続く蕎麦屋。実家の蕎麦を尻目に、お好み焼きばっかり食べていた。

女性にもてていたラオウにとって、Kちゃんは「ワン・オブ・ゼム」。強い男はモテる。俺は強いけれどモテナイぞ!と言う声が聞こえてきそうだが、断言するよ。それはまだまだ弱いからだ(文句があったら、バッチ来い!俺とラオウのタッグが何人でも相手するぜ♪)。

さて、振り向いてくれないラオウをあきらめきれずに悩む娘を見たKちゃんの親父さん、男親としてなんとかぜねば!と意を決して店に乗り込んだ。


親父「おい、ラオウ!娘と付き合う気はないのか?」
ラオウ「・・・はぁ、ないっす」
親父「お前、ずいぶん腕に自信があるらしいけどやなぁ、ワシも力には自信があるんじゃ!俺に腕相撲で負けたら、潔くうちの娘と付き合わんかい!


潔く、ってあんた、まったく理屈になって居ないんだけれど。なんて突っ込む暇もあらばこそ、勝負を挑まれて見せる背中を持って居ないのが、ラオウだ。

レディー・GO!「うおりゃああああ!!」バキ!!!「ぐわああああああ!!!」崩れ落ちる親父さん。右腕があり得ない方向に曲がっている。男と男の魂のド直球勝負は、ラオウのTKO勝ちとなった。しかし、こいつ、そんなにKちゃんと付き合うのがいやだったんだろうか・・・?

そのまま救急車が呼ばれ、病院へ直行。入院・手術となった。

さすがに気まずいラオウ、足しげく病院に通い、親父さんの病室を見舞った。そんなある日、看病にきたKちゃんとばったり会い、詫びを入れた。

それをきっかけにラオウとKちゃんは急接近。めでたくゴールイ〜ン!と相成った次第。

男親として残してやれる最高のことを成し遂げた親父さんは、昨年、事故で不慮の死を遂げた。

火葬してお骨を拾った時、ボルトが出て来たという。言うまでもなくラオウとの激闘のあと、病院で埋め込んでもらった“男の勲章”だ。


ラオウに右腕をへし折られ、救急車に乗り込むとき激痛に顔をゆがめながらつぶやいた一言が、またイカス。「勝てるはずだったのに…」


親父さん!それ、勘違いですから!!・・・でもねぇ、時として勘違いは不可能を可能にする!! あんた、漢だ!感動した!!

俺もまた、娘のために戦う日が来るだろう。その日のために日々鍛え続けるぞい。まぁ、太気拳の看板背負っている以上、俺は負けないけどね ( ̄ー ̄)ニヤリ


・・・あ、それじゃ娘は結婚できないってか??