我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

武の格言-1 『空手は湯の如し』


空手は湯の如し 絶えず熱度を与えざれば元の水に還(かえ)る
(松濤翁二十訓より)


功が成るために大事なことは、素直な心と継続です。私が空手道を稽古していた頃、道場に松濤翁二十訓という船越義珍師範の格言が墨書されており、毎日読んでおりました(いやでも目に入りますから)。最近は、空手を太気と読み替えています。

昔、この句を著書で取りあげて、「多忙な現代人が中年以降になってこんなこと(=絶えず熱度を与えること)を本気で出来るはずないだろう」と言う趣旨の批判をした中国武術の先生がいました。

名前も著書も忘れましたが、バカな親父ですわ。

お湯になるまでは、ある程度一気に熱を与えて仕上げなければいけないでしょうけれど、お湯の状態を維持するには大した熱は要りません。それより、毎日少しでも“熱を与える”ことが大事です。

どの程度まで追求するか、によって熱の与え方は異なります。私のように、専業では無くても一応道場の看板を掲げるとなれば、ある一時期は汗みどろになって稽古に励む時期も必要でしょう。

しかし、一般の社会人として健全な形で武の稽古を愉しむというスタンスであれば、道場通いは週に1回か2回で充分。普段の日は、自己練習を仕事の合間に10分でも20分でも行えば良いんです。

例えばですが、朝は柔軟運動10分・立禅10分、夜は自重筋トレ5分と突き100回、と言う具合に行えば、よほど分刻みのスケジュールで生きている人以外は稽古出来るでしょう。

忙しいこと自慢するより、忙しい間を縫って毎日20分稽古することを自慢した方が良いんじゃないでしょうか?忙しいことそのものは、なんも自慢にならないっすよ(笑)。