我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

複雑系

昨年、職場の教育担当大臣に任命された。私が教育を実施するのではなく、職場における教育会の開催や資料の拡充をアレンジする世話人であります。

雑用を含めて色々やることがあり大変ではあるが、おかげで、自分自身が教育会に参加する機会を得るという役得に預かっています。

本日、供給や在庫に関するオペレーションの講義を受けた。現在ではこう言う分野では優秀なパッケージソフトがあり、自動計算する仕組みなど便利な機能が満載であるが、最後は人間系で汗を流す、という要素を忘れてはいけないということを講師の方が言われていた。

この方は次週には会社を去るOBである。現場で様々な苦労をして現在の理論とノウハウを構築されており、社内の構造改革でも大活躍されて来た。

色々な理論や知識が巷にあふれているが、ビジネスの基本は人と人のコミュニケーションであり、問題が生じたら現場・現実・現物にあたって地道に解決の糸口を見つけるのが最善の手段。

講師は現場・現物・現実、そして顧客を知らないシステム屋・レポート屋が偉くなり、幅を利かせ始めたことに懸念を持たれているのだそうな。

社を去る一週間前に小山まで来て下さり、貴重なお話を伺った。業後は有志数人と一献会を開催し、大きな声で言えないホントの話までお聞きしてお開きとなった。

彼の展開する理論は精緻で難解な部分もあり、私には理解できない部分も多々あったのだが、そのスピリットの部分は何となく伝わったような気がする。

何でもハウツーやスッキリしたメソッドで解決したがる受講者に彼は言い放った。「需要予測も事業計画も理論も、外れるんや。神様じゃない限りな。それを埋めるのは人間系・複雑系の能力や。単純にスパッと割り切って答えが出たら、誰も苦労せんワイ!

まさにしかり。メソッド・理論・ハウツーを振り回す人間は巷にあふれている。武道界すらも最近はそうですナ。こう来たらこう返す式のハウツーは確かに多少は必要だけど、最後は人間力の勝負ですよ。

ちょこっと当てるのが上手いとか、そんなのどうでも良い話で、相手の心身を居付かせ、死命を制する一本が打てるか否か。心を居付かせるような攻めと存在力を身に付けるには、ハウツーでは埋められない複雑系の“総合力”が必要になる。

与えられた問題の解き方をどれだけ知っているかで学校の成績は決まりますが、世の中で通用するアタマの良さは、何が問題なのかを見つけ出し、それを解決できるという能力ですね。

武術も全く同じです。私は稽古では結構気前よく色々なことを教えますが、来年奥入昇段を控えたM君には、問題に気付くまで教えないことがあります。黒帯になろう、という人間が自力で問題を発見できないようでは全く話にならないですからね。

その代り、彼には少しずつ経験と試練を積ませて自得する場を与えて行こうかと考えて居ます。来年の彼の成長が楽しみです