我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

イカレタ親父と組手


太気拳至誠塾栃木県小山支部は、現在6名の会員さんが稽古に来られています。取り組むスタンスは人それぞれと思いますが、皆さんそろって熱心に稽古や行事に参加頂いており、頭が下がる思いです。

先般の稽古でのこと、忘年組手が近付いて来たので二人組の稽古をメインに進め、最後は忘年組手参加希望者同士で組手をおこなってもらいました。私も足の怪我に気をつけながらも、軽く相手を。もちろん、蹴りと足踏みナシはお約束だ。

稽古が終わり駐車場に向かう途中、最年長者のMさんが「安全策を考えますので組手に参加させてもらえないでしょうか?」とおっしゃいました。

Mさんはお身体の事情により組手が出来ません。脳梗塞の治療で開頭手術をされているため、開頭部位には打撃を絶対に受けてはならない、とお医者様に指示されているのです。

かつては組手をされていました。弊支部では最低限の安全策としてヘッドギアを着用しているので、大丈夫だろうと判断をされて組手をされたのです。それでも私との組手の後、体調を崩されるという事故があって組手を断念されました。以来、護身術としての太気拳を稽古されています。

護身術としての太気拳とは、格闘技と異なり勝負の方法ではありません。

組手はリスクを伴う勝負形式の稽古であり、総合力を検証する手段です。でも、護身は総合力が上回る者と対峙しても身を全うするのが本分。両者はイコールではない、と私は考えて居ます。

どんなに理想を言っても、生身の人間いつかは勝負稽古は出来なくなります。でも、護身は一生ですから、今からそれを追求されるのも良いのでは、と私はMさんにお伝えしました。

しかし、Mさんもまだまだ50歳代前半。リハビリで始められた太極拳は指導もされているという腕前です。稽古の参加率も会員ナンバー1番のM君と双璧。マススパー的な練習やミット打ち、逆手など、自由組手以外の稽古には問題なく参加されます。病歴はあっても平均的な同年代の方と比べれば、体力も明らかに上です。きっと皆の組手を観ていて闘志に火がついたのでしょう。

自転車のロードレース用のヘルメットなど、開頭部位への衝撃を分散できる手段を探ってみる、とのことでした。いやぁ〜、尊敬をこめて言いますが、イカレタ親父さんです(笑)!

なんかこういう方と一緒に稽古させて頂いていると、健康な私なんかがちょっとやそっとで弱音なんか吐いていられないな、と気が引き締まりますね。

親指の爪が根元から剥がれて居るけれど、忘年組手やっちゃおうかな、俺!・・・あ、いや調子に乗り過ぎました。

でも、半分本気です。私の回復力は、かつて高木先生に「トカゲみてたいですねぇ!」と折り紙つけていただいたことがあります。

すでにダメになった爪の下の皮が張って来ているようで、安全靴さえ履けば、歩くのは普通に大丈夫になりました。組手も軽くはOK。この分だと、23日には間に合うかも知れないな!

Mさんに「先生」と呼ばれる俺らが「組手痛いからイヤ」とか言っていたら、世間さまに顔向けできないだろ??ま、普通の靴履いて走れるようになったら、急遽参戦があり得るということで!

おじさんたちがこうして頑張っているんだからさ、若い衆は「僕ちゃん組手こわ〜い」とか言って逃げていたらダメだぞ!?な?