我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

大事なものは何ですか?

かきねごし茶&クッキー


一昨日、夏バテはありません!と言い切りましたが、夏風邪を引いてしまいました。面目ない!身体の節々と喉が痛いです。

睡眠不足と、実家に帰省した際に犬と家内を気遣って車内で冷房を掛けすぎたのが原因であろうと思います。

さて、今日はちょっと長文になってしまいますが、お付き合いください。

オリンピックなんですが、私も時々は観ています。感銘を受けたのは、女子柔道の谷本選手です。といっても、通しで観たわけではないのですが姿勢が素晴らしい。

「せこい柔道は大嫌い。正々堂々と戦いたい」

口で言うのは簡単です。しかしながらメダルが懸かった大試合では、勝つためには何でもやる、というのが大方の姿勢だと思います。実際、勝つためにジャケットレスリングと化したJUDOを学ぶ柔道選手も多いと聞きます。

私は住む世界が違いますので、何も言う資格は無いのかもしれません。ただ、「もう柔道は見たくないな」と思っているのは確かです。

JUDOを学ぶのもいいでしょう。少なくとも、無策で今の世界柔道に臨むのは確かに無謀であると感じます。でも、JUDOを学ぶ日本人柔道選手を見ると「何に憧れて柔道を始めたんだろう。あなたの大事なものは何ですか」、と聞いてみたくなる。

ちょっと話は変わりますが、私は武術の世界の住人です。武術は制限や予測が、成り立たない渡り合いでわが身を全うすること、これが本分です。ある意味、綺麗汚いが関係ないわけです。

だからちょっと間違うと「相手が木刀なら、こっちはボウガン持つモンね。相手がボウガンならこっちゃエアガンよ。だってそれが武術じゃん」「武術家は急所専門で狙うから格闘技は通用しないんだよ」とか言い出すタワケモノが出て来るんです(実際、見聞しました)。

ある意味それは正解でしょう。でもそれは、そこまでして護るものを持っていればこその話だと思います。私自身、愛する家族や友人、そして生涯の宝物である太気拳を汚されるような場面になれば、ありとあらゆる手段で敵を排除すると思います。

だからその手の御仁=武術オタクにも問いたいのです。「あなたの大事なものは何ですか」と。

護るべきものを持たない人が武術や格闘術に興味を覚えるのは、本当に危険であると柄にも無く危惧します。尊いものを護るための武術であり、それを習得するために費やされる行動と時間は、護るもの(家族、恋人、友人、自分の矜持…)が尊きがゆえに道となりうるのではないでしょうか。

変てこで大雑把な表現ですが、正々堂々と地に足を着けて周囲を大事にして生きているからこそ、土足で上がりこむヤツは絶対に許さん、何やってでも勝つ!という気合いが生まれる、ってことです。

話を戻すと、谷本選手の正々堂々たる柔道は、その美学を貫く道のりの裏にある苦悩や努力の大きさがあるゆえに皆の共感を得るのではないでしょうか。彼女の輝きの裏にあるものの大きさに、私は思いをはせる。

彼女の大事なものは、正々堂々たる一本を取る柔道。相手に指導や注意を取らせるセコイ柔道ではなくて、正面を見据えた一本狙いの柔道。

五輪制覇の後、怪我や不振に悩まされながらも、彼女はそれを追及し、見事大舞台で栄冠を手にした。本当にすごい精神力です。

私も谷本選手を見習って、稽古では正々堂々たる推手や組手を実践せねばいかんな、とつくづく感じた次第です。

谷本さん、ありがとう!

P.S. 風邪が結構辛いので、今日の稽古は午前中の3時間のみ。午後は仮眠の後、益子のSTARNET(スターネット)さんに出掛けました。ハーブティー(かきねごし茶)を戴いて、異空間でゆっくりしていました。