我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

朝原選手が熱い

100M走の朝原選手が今期日本最高の10秒15を出した。オリンピック3回、世界選手権5回出場の、35歳の大ベテランである。

TVで見たら45歳の指導者の顔。「先生、走るんですか?」っつう感じで、妙に落ち着いている。

レーニングシーンを見て感心した。ハードルを使って地面からの力を受けて推進力に変える練習をしていたのだが、まったく力み無くふわっと身体が浮く。身体が本当に軽いのだ。

不肖・鉄太郎も20代前半までは跳躍などもふわっと浮いたが、今はケツが重くなってしまった。面目ない。跳躍は跳ぶための筋力のチェーンと、身体の調整能力がないとふわっと跳べない。

私は跳躍をやらないでいたので、20代後半以降、バネが衰えてしまった。

スプリント系の競技で、30代の日本人が前述のような記録を出すのは、本当に凄いこととしか言いようが無いのだ。

朝原選手は久しぶりに筋力トレーニングをやっているそうだ。これが好記録に繋がっているとか。佐藤嘉道先生言うところのいわゆる「身体に焼きを入れる」というやつである。

焼きを入れることで現在の自分の身体の限界がわかるし、また、神経にも筋金が入る。これが先ほど述べた筋力のチェーンに繋がる。身体を鍛えることを否定する武術は、この辺りの要素についてどのような回答を持つのだろうか?

太気拳においても、常々高木先生に「気を溜めたら、出さないと(=発勁)」と言われている通り、禅をやって神経・呼吸・姿勢を整えて力を蓄えたら、それを解放する稽古が必要である。

解放する瞬間、朝原のジャンプのような柔らかさを出せたらいいな、と思う。