我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

太氣拳もし戦わば〜 VSツキノワグマ編

facebookに先般投稿したネタをば・・・


「先生にお聞きしたいんですけれど・・・」
ある夜の稽古開始前に最年長メンバーのMさん(60歳)が、神妙な顔をして寄ってきた。
んん??なんでしょう?私で分かる事だったら・・・

「もしですよ、クマが向かって来たら どうしますか??」クマって、熊??あの熊ですよね。どうもこうも、勝てるわけないでしょ?

速攻で離脱するしかありませんね!!・・・でもなんでクマ??
「いやぁ・・・いつも稽古している山でクマに出くわしたんですよ!!
えええええ!!!良くぞ御無事で!!
なんでも、裏山で立禅をしていたら、メチャメチャくさいウンコの香りがただよって来て「しまった途中でクソを踏んだかッ!!不覚!!」と、立禅中なのに靴を確認した、Mさん。しかし、靴はいたって綺麗。
では、なんで??
辺りを見回したMさんが、10M先に見たものは・・・人間の大人ほどの体長がある黒いツキノワグマ!!

時期から考えて、冬眠から覚めてクソしていたんだな。滅茶苦茶にくさいウンコは冬眠中に蓄積された宿便ではないのかッ!!

数か月分のウンコをひねり出した後は、冬眠明けのBreakfast!!『太氣至誠拳法もし戦わば!ラマダン明けのクマ編』と相成るのか・・・とは第三者が面白おかしく語ることは出来ても、当のご本人は笑い話ではなく、様々な思いが走馬灯のように脳裏に流れたという。

こんなやつとどう戦えばいいんだ??クマの弱点ってどこだ?眼ん玉?キンタマ??素手のパンチが効くの??そもそも、当てられるの??
心臓の鼓動が聞こえるほどの大緊張の中・・・飢えたクマが振り向いた!!!

もう、やるしかない!!逃げ道はないんだ!!

Mさんの脳はフル回転で、クマに関する伝聞を検索した。
そう言えば!!あの時あの方(現役有名武道家。特に名を秘すw)がクマとの戦いを想定して、クマ牧場に忍び込んでクマの習性を観察しに行ったお話しを聞かせて下さったではないか。その話を思い出せッ!!クマの弱点が見つかるはずだ!!
え〜と!こんなことをおっしゃっていたな〜
「知ってか〜?クマはな!上段受けが出来ねえんだど!」

そうか、上段受けが出来ないなら、顔面攻撃だな・・・って、ち、ちがう!!

上段受けが出来ないことなんか、弱点になり得ないだろ!!
え〜と、あと何か言っていたっけ?大先生は??
「クマがどれくらい打たれ強いか試してみようと思ってさ、持ってきたバットで思い切りぶん殴ったんだけどよ、ぜんぜん効かねえんだぁ。人間のパンチなんか、屁でもねえど、クマの野郎はよ。まぁ、遠くからライフルで撃つしかねぇどな!!」
がぁぁぁぁぁん!!!!大先生が思い切りバットでぶん殴っても効かないのに、俺(Mさん)のパンチが効くわけないじゃん。
もうだめだ、食われる。腹ペコ熊と向き合ったMさんは、死を間近に感じた。
・・・とその時!!携帯が鳴った ピロリロリン♪ピロリロリン♪ピロリロリン♪

その瞬間、腹ペコ熊は恐るべき速さで身をひるがえし、山の中に走り去った。助かった!!動物は知らないモノ、理解を超えるモノに極端に恐れをなすというが、どこかの誰かがMさんの携帯にかけた電話の呼び出し音が、クマをして逃走せしめたのである!!

「もう裏山で立禅はやりません!!」死の淵から生還したMさんは、爽やかな笑顔でこう語ってくれた。
(了)