我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

振り付けの前に

たびたび書いている通り家内は地元でベリーダンスを教えている。


近年ベリーダンスは盛んになりつつあるようで、海外から多くの有名ダンサーが日本に招かれているのだとか。

海外の有名ダンサーがよく口にするのが「日本人は振り付けを覚えるのがずば抜けて早い」ということ。

ひとつには日本人の生真面目さを語っているのだが、真の意味はもうひとつあって暗に「せっかちで基礎を掘り下げないで順番だけ覚えてしまう」ということを皮肉っているらしい。

振り付けの前にやることがあるだろう、ってか(笑)


家内が師事している先生は筋膜療法の治療家でもあり、自身の故障経験から身体作りや動きの基本を嫌というほどやらせるのだが、その動きの解説は私も「なるほど」と思わされることが多い。

カナダのセミナーで先生と同室だった人曰く「先生はヒマさえあれば基礎の身体作り・コンディショニングやマッサージを延々とやっている。振り付けなんかやっているの、見たことない」だそうだ。

まあ振り付けは飯のタネだから見せない、ということもあるだろう。しかし、それを差し引いても実際に基礎・基本を嫌というほどやっているのだと思う。


武道にしてもつまるところ同じである。振り付けの前にやることがあるってこと。

先日不二流体術の大嶋宗家と色々とお話した際にも、そこで平仄が合った。


「私、時分の稽古は○×と■△ばっかり延々とやっていますよ。あとはあまりやりません」

親英体道開祖の井上方軒先生は、内弟子には二年間居捕りだけやらせたというお話も伺った。

「それでも卒業の頃には警察の柔道の連中を相手に稽古出来るようになるそうです」


私も自分の稽古は基礎錬体や基本ばっかりやっている。自分の身体のあちこちに“レーダー網”と“照準”と“発射台”を作り、それらをメンテしておくという作業。

その作業はフィジカルトレーニングもメンタルトレーニングも兼ねる。これはいつか土に還るときが来るまで続けられるだろう。

それくらい奥行きがある稽古である。

さて、明朝も稽古だ。寝よ寝よ♪