我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

勝ち過ぎるな

稽古会のあとM君とともに東京へ。W先輩の練士昇段祝賀会に参加。

Wさんのお人柄ゆえか、多くの方が集まり大変な盛り上がりでした。


私自身のことに思いをいたすと、高木先生にお世話になってもうすぐ12年になるのだが、私ほど至誠塾にお世話になった人間はそうは居るまい。


高木先生に一番頻繁に注意されたことは、「あなたは勝ち過ぎる」ということ。

聞いてみるとどうやら「相手に逃げ道を与えないとダメだよ」ということであるようだ。


「口でも腕力でも一方的に勝つと、相手は救いとか逃げ場が無くなるだろ。そうなれば相手は窮鼠猫を噛むということになりかねない」

ん〜、全くです。身に覚えがあり過ぎます。


相手に逃げ道・救いを残す、ということは余計な恨みを買うリスクを軽減する。

また、徹底的にやっつけなきゃいけないくらい悪い野郎っていうのも、そうたくさんは居ない。

だったら退路というものを残せば、相手も自分も救われる。


学生時代に聞いた“神武不殺”の教えを、ふと思い出す。

剣の一撃を通じて相手の邪気を祓い清め正気を送り込むのが、日本剣術の真髄であるという。

我が一撃により正気を取り戻した相手とは、また仲良くすれば良い。そのために確固たる力量を以って武威を示すとともに、慈悲の心を涵養するのが武道家の務めであると。


余談ですが、私が注目している荒谷卓先生もご著書で同様のお話をされていてびっくり。


時間が経って腑に落ちることって結構あるなぁ。先達の教えとは、尊いものです。