我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

三倍は技の外 - その1

澤井先生は生前、「三倍は技の外」とおっしゃったそうだ。体力・体格を総合して3倍の差があれば「技」は通用しない、という厳然たる事実だ。

そして、3倍の差は世の中にいくらでも存在する。

親友がマイアミに駐在している。彼が総合のジムに見学に行ったところYouTubeで有名なストリートファイターの黒人が居たとか。練習の光景はまさにショッキングなものだったそうな。以下カギカッコ内彼のメールから引用。

「○△さんをムキムキにした感じでとんでもない。リングの上で構えるともっととんでもない。更に組んで練習してるのを見ると、もうスゴイ。90K以上はある相手を、タックルでコーナーに押し込めた後、低い位置からゴボウ抜きで肩に抱えてたよ。昔間近でみたNFL選手の恐ろしさを彷彿させる迫力だった。やっぱえげつねえわ、毛唐のデカイのは。」(原文ママ−個人名除く)

因みに、この○△さんってのは至誠塾の塾生だ。アマ力士だった人で、ベンチプレス180キロ以上を挙げる。小生も腕力や足腰には自信があるが、推手で押し切ったことが無い。

この御仁、相撲の実力はプロに換算すると、三段目から幕下下位だとか。まあ、日本人では桁が違う身体なのだが、件の黒人は彼を筋肉質にした体とか。唖然。

(彼らと比したら)軽量の私が年齢的なことを度外視してこれから幾ら鍛えても、力でねじ伏せることはあり得ない。

「技」と言っても、もうこんな怪物には通用するわけがない。でも、そもそも技で抑え込むという発想そのものが、形を変えた「力任せ」なのではないだろうか?

そこを再考してみたい。 (つづく)