我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

足捌き(鉄)

天才ボクサー、エドウィンバレロ帝拳ジム)のWBA世界Sフェザー級
王座の防衛戦を観た。

アマ時代よりダウンなしというタフガイ、ロサダを相手に開始直後から
終始攻撃的に試合を進め、強烈な左で二度のダウンを奪い、たった72秒で
初防衛を決めた。

特に最初にダウンを奪った左は秀逸で、かろうじて分かったほど速かった。

何でもこの凄絶な一撃、“雷パンチ”と名付けられたとか。強烈なパンチだ。

しかし、その殺人パンチも相手に確実に当たらねば意味が無い。

また、いかなパンチの持ち主といえども相手にパンチを先に当てられては
勝利はおぼつかない。

打たれずに打つ為に何が必要か?足捌きである。

鉄太郎が思うに、バレロのもう一つの武器は滑るような足捌きであろう。

さて太気拳だが、太気の強みの一つに流れるような歩法がある。
歩法・身法・手法が一体となって、打たれずに打つ、を実現する。

武術である太気には打撃のみならず組み技や、さらには武器への対応が
求められる。

それらを同じ身法の原理の応用でこなさねばならぬため、ボクシングの
難しさとは難しさの種類が違ってくる。

太気は立禅などの練法で得た渾元力を様々な局面での使用に耐えるまでに
仕上げねばならないため、完成には時間がかかる。

しかし、一度身に付けたら簡単には実力が落ちない。

今、太気を始める前の自分と組手をやったら当てさせないだろう。

かつては一撃の力に自信はあったが、歩法のレベルが現在より低かった。

そのため見切りと体捌きに頼るところがあり、防御面でやや難があったが、
太気を始めてから相手の攻撃が落ち着いて見られるようになった。

攻撃を外せば、いつかは隙が生まれる。もっと進めば隙を作るように誘導
する事も出来る。

相手の体勢を崩したら、勝機はそこにある。
                     鉄太郎