我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

学び - その3

カフェ・バニラ@音楽館


自分が取り組む対象に、虚心坦懐に頭を垂れて向き合う。そうすれば、それが武であれ文であれ書であれ、その姿を見せてくれる。そうすれば、あとはそれに自分を合わせてゆくのみ。

私は太気拳に取り組み始めた時、自分の習得した全てをいったん脇に置いた。空手ではこうだっただの、拳闘ではああだっただの、○×流ではどうだの・・・そんなことはどうだって良いんです。

そうすると、何が起こるか。まず、弱くなる。太気拳が身について来るほど、組手のバランスが崩れ、自分の習得したものが出せなくなってしまう。

もっとも、そうなることは分かっていたのだが、やはり身を以て体験すると焦る。こうなった時、出来ることはただひたすら我慢することのみ。我慢、我慢。

弱くなればなるほど、基本稽古に打ち込んだ。転機は入門して約1年2ヶ月が経過したあたりでやって来た。ある先輩との組手稽古の最中、今まで分かっていて当てられた打ちを外している自分に気付いた。

なんだこりゃ??

じっくりと自分の身体に浸み込ませていた歩法と身法、そして前捌きが、自然に出始めた。それまで反射神経で避けようとしてバンバン打ち込まれていた掌打を、確信を以てはずしていた。

太気拳が、私にその姿を少しだけ見せてくれた瞬間だった。もちろん、最後は捕まってしまったが、その夜の帰り道の高揚感は、生涯忘れない。

「俺が、俺が」の精神は心の鏡を曇らせる。今までの自分で良いのならば、稽古なんかやる必要はない。そんな姿勢で居たならば、真理はその姿を現してはくれまい。


あの夜の高揚感を一人でも多くの人に味わってもらいたくて、俺は稽古会をやっているのかも知れないな。


【今日の1枚】
小山市犬塚の和風喫茶音楽館でいただいた「カフェ・バニラ」。珈琲に生クリームとバニラアイスを落とし、伊予柑のピールを添えた贅沢な一杯。稽古の後は、リラックスタイム♪これが長く続ける秘訣ですな・・・