養生〜いのちに対する礼
最近とみに思うのであるが、私の主宰する稽古場においては「養生」という考え方を大事に取り組んでいきたい。これは稽古を健康法にシフトして行く、ということでは全くなく、具体的な稽古は今も昔も武道そのものです。
どういう事かと言えば「いのちに対する礼」というものを重視して行こうと、改めて考えている、ということです。
どのような修養でも同じなのだけれど、武道の稽古においては特に「自分を研ぎ澄ませる」という要素が要求される。稽古の中で武技の修練という肉体運動を通じて、行為主体者である自分自身のレベルアップを図っていく。それが無ければ「武道」ではなく単なる「運動」「作業」になってしまう。
太気拳において修練される技は極めてシンプルで、体力的には殆どの人が行う事が可能ではある（そうでなければ生涯武術たり得ない）。しかしながら、頭のてっぺんからつま先まで意識を集中させて稽古することが要求されるし、そこに「相手」が存在するので、初心者であろうがベテランであろうが、そのレベルにおいて気力体力を奮い起こす事なしには充実した稽古が出来ない。
何度も書いたが、大成拳（意拳）創始者・王薌斎先生の言われる「拳とは力を奮い起こすことである。局部の方法ではない」という言葉を、我々は常に念頭に置いて稽古していく必要がある。
この「奮い起こす」ということが大事で、いつも能力以下のことしかやっていないとどんどん能力は先細りする。逆に、少しだけでも良いから能力以上の努力を繰り返せば、その積み重ねが月日を重ねると「とてつもない進歩」として結実する（ネットを少し調べれば「1.01の法則と0.99の法則」という形で、ほんの少し努力するかorサボるかでどう結果が異なるか、ということについて記事が出てきますね）。さらには「奮い起こす能力」自体、使われないと退化して行く。
私の道場にもさまざまな方が学びに来て下さる。一見して、武道・格闘技とは無縁と思われるような方もみえる。実際、気力・体力において平均に届いていない部分もある。入門前の面談で「私でもできるでしょうか？」と繰り返し問われた。
私の答えは「あなたが稽古の趣旨・目的を理解されて取り組まれるのならば、何ら問題はありません」とお答えし、武道とはどういうものであるか、太気拳はどのような稽古をするのか、ということを説明した。
前述の通り、武道とは何かといえば「武術の修練を通した身心学道（体験・体現を通じた知性と感性のレベルアップ）」である（参考記事URL：http://d.hatena.ne.jp/superbody/20150914/1442248239）。プロになるということであれば話は別だが、稽古場に自分で来ることが出来る身体を持っていれば、稽古には付いてこられる。
ただし、私は怠け者がついて来られるようにはしていない。奮い起こす努力を怠る者に合わせれば、たちまち「場」が乱れるからだ。現時点での能力が高かろうが低かろうが、そんなことは問題ではない。能力の高低など相対的な問題である。要は「やる気」「向上心」であり、他のメンバーときちんとやって行ける「共同体感覚」である。
この部分は、技撃を主体に学ぼうが、養生・体力作りを目的として学ぼうが、最低限、ご理解を頂いている。ここを理解して頂けないようであれば、世間でいう「武道向きではない人」が、いわゆる「おみそ」「おまめちゃん」になってしまう。周囲がおまめちゃんとして接する限り、その人は「奮い起こす」姿勢を示さないだろう。そしてその空気は周囲にいる他のメンバーに伝播して、稽古場の「氣」が澱む。澱めばやる気がある者も次第に「研ぎ澄ます」「奮い起こす」ということをしなくなる。初めに戻るのだが、そうした場で行われる行為は、運動ではあってももはや「武道」ではない。
ひとり一人の取り組み方の姿勢を尊重していくのは当然であるが、道場という場においては「稽古」という軸があってこそ成り立つ。明るい雰囲気の中にも、けじめや礼というものが貫徹していることが大事で、それはすなわち稽古に臨む者同士「いのちに対する礼」を暗黙の了解として心得ておくということである。
太気拳至誠塾栃木支部は、太気至誠拳法（太気拳）を学ぶ武術・武道の道場です。武道初心者はもちろんのこと、武術・武道・格闘技で伸び悩んでおられる中級者以上の方も歓迎いたします。また、護身・健身（健康づくり）目的の方の参加もお待ちしております。稽古会場：小山市・栃木市・宇都宮市・上三川町。詳細は：http://taikiken-tochigi.jp/practice/
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＜太気拳とは＞
中国拳法の流れを汲む武術。創始者・澤井健一が立禅と命名した「ただ立つだけ」の独特の鍛練法を核とする。
