我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

家賃

今週は突然飛び込んできた担当外の“お仕事”に翻弄されてしまったナ。

・・・そのお仕事とは、取締役本部長名で出す海外の各工場長向けの依頼(≒命令)文書の英訳。

もちろん、私に取締役から声が掛かるわけなどなく、私の上司の上司の上司たる工場長(←それでもかなりエライ)からの依頼だ。

数日前、ばったりと顔を合わせた時に「頼むよ」と言われたのだが、反射的にお断り申し上げた(笑)。


「他に適切な方がいらっしゃいますよ」

工場長「・・・」


普通、偉い人にモノを頼まれたらチャンスとばかりに張り切ってやっちゃうんだろうけれど、俺にとってはチャンスはピンチですから!!

大体ねえ、そのレターの依頼内容自体、理解していないんだから!無謀ですから!!

向いている人・やりたい人は他にも居る。

しかし、月曜の出張先のマネージャにメールを打って原稿を届けられちゃった。そこまでされたら、もう断れないやね。

一旦引き受けたら、俺はバキバキやる。

一昨日・昨日と何度となく工場長や関連部門のスタッフと打ち合わせ、昨夜無事に本部長の承認を得て、今朝発信された由。

で、工場長が労をねぎらって一言。

「僕の意を汲んで英訳してくれてありがとう。君は帰国子女か?」

「いえ。バリバリの国粋です」

工場長「・・・そうか」

せっかくいい具合に沈黙が生じたのに上司は「彼はこう見えて」と言わなくても良いフォローをはじめる。


「ああいう時は多少ほら吹いてでも存在をアピールするもんだ」とあとでお小言。

こんな感じでっか?↓

「何度か同じような仕事をすれば、本部長にだって存在を知ってもらえるかも知れないよ」


きっと、昇進が遅い私への上司なりの思い遣りなんだ。その気持ちだけもらっておく。


「万が一お目にぶら下がったとしてですよ、本部長のお膝元とか、そういうのは俺にとっては“家賃が高い”ってやつですよ」

上司が理解できていないようだったので、説明をば。

実力以上に地位が高いことを、相撲用語で“家賃が高い”という。先場所三勝四敗で十両に昇進した連中なんか、それだぁね。

そりゃまあ、背伸びが実力を伸ばしてくれることも結構あるよ。

参段チョイの実力で四段いただくのなら、まあ、良いけれど、どう見ても初段と二段の間くらい力で四段や五段もらったら、とても家賃を払いきれないだろ。


俺の仕事もそう。

たまたま英訳が気に入ってもらえただけで目に留まったって、すぐにボロが出るに決まっているだろ!できる連中の中に入ったら俺なんかお豆ちゃんだからね。


それに偉い人の周りに仕えたら、太気拳や剣道どころじゃないだろ。週末に大和と遊ぶ時間だって取れないじゃないか!

返せ!大和のこの笑顔を返せ!

俺は身の丈にあった地位で楽しくやる。


俺が背伸びするのは、武道に関してだけだ。