我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

水が出るまで

ときどき、昔言われたことをふっと思い出すことが多いのだが、今日は2006年の太気拳至誠塾の標語を思い出した。曰く「志。想いを強く。井戸は掘るなら水が出るまで掘れ」

澤井先生は何にでも軽薄に手を出しては掘り下げないで放りだす輩を、「そこいら中に穴を掘っている」と称したそうな。水が出るまで穴を掘れば、それは立派な井戸であるが、途中で放り出せば単なる穴。

水が出るまで掘った、ということは地下の水脈にぶち当たった、ということ。地下の水脈に当たれば他の場所で井戸を掘リ下げた人とも水脈を通じてつながったということだ。

掘り下げた者同士は、話が出来る。初めて言葉を交わしても、通じ合える。水が出るまで掘り下げた事の無い者では、それは難しい。同じ語を口にしても、その意味するところが全く異なることすらある。

水が出るまで掘る原動力は、「志」である。掘り下げた者同士は、お互いの「志」に自らに通ずる何かを感じるのだろう。

人生、一度きりなんだから、他人が掘った井戸の話をどうのこうの言うよりは、自分で水が出るまで掘った方が楽しいんじゃないかな。志を同じくする仲間が居る、ということは、幸せなことである。

志が持てなかった人は、って?そんなの、知らん!