我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

自己ベストを出す

気合だー!!


昨日は午後に買い出しに行き、夕方5時から家族そろってTVの前に陣取っていました。TV三昧も年に何回も無いことです。ボクシングは勿論面素晴らしかったのですが、そのまえにNHKでやっていたレスキュー隊員の訓練の取材番組も素晴らしかった!

各地の消防署から選り抜かれた精鋭隊員が、さらに厳しい職場であるレスキュー隊員を目指して25日間の特訓を受けるシーンを取材した番組です。全編、気合と根性、一言で言うと“男の世界”ですね。

まずフィジカルトレーニンからして違う。色々な種目を行うが、これ回数を告げずにガンガン行う。リードするのは現役レスキュー隊員である助教たち。この人たちが凄まじい。訓練生だって各地の精鋭隊員だが、そんな連中が悲鳴をあげて脱落する中、助教たちは訓練生を叱咤し延々と訓練をこなして行く。

回数を告げないのは、訓練生たちが勝手に決め付けている限界を、強制的にとっぱらうためだという。とにかく容赦がない。出来ない理由など誰も言わないし聞かない。ただやるのみ。

ワシャ、学生時代の稽古を思い出しましたね。うさぎ跳びとかジャンピングスクワットとか、連続蹴りとか延々とやらされて、もう終るって言う時に「声が出ていねぇ!やり直し!」とかやられると、もう、愕然としたなぁ。そんな稽古の後、よくヘンな色のションベン出ていたな。

こないだ一緒に稽古した友人の畠山さんの部でも、シゴキはすごかったらしい。事故を装って稽古をやめたくって、ランニングコースで店のショーウィンドウに飛び込むやつが居たとか。その店は部のOBがオーナーさんで、毎年飛び込むやつが居るんで防弾ガラスにしたそうな。

勿論、全く同じこと今やれって言われても御免こうむりますが、あのシゴキによって引き出される「必死の力」の迸り(ほとばしり)は貴重な経験です。お陰で今でも体力は20歳代の人間に負けないし、心のリミッターを一瞬にして取っ払えるっつう自信はありますね。

レスキュー隊員に話を戻すと、彼らは普通の人間が逃げ出す場面で前に飛びこまなければならないわけです。本能が逃げろ、と言っているのを前に出る。そんな気合いは屁理屈からは生まれない。

自分を徹底していじめ抜き、一瞬にして状況を判断して覚悟を決める。そういうのは、悠長な稽古からは決して生まれない。武術も同じです。太気拳だからちがう、ということもない。

高木先生が小山に来て下さった際に「毎日の稽古で、一度で良いですから“自己新”を更新してください」とおっしゃいました。その年齢・体力なりの自己新を毎回目指す。そんな気持ちが若さとか清々しさにつながってくるのではないでしょうか。

40歳を超えた今、自分の20歳代を超えるジャンプやスプリントを行う事は不可能。当たり前です。しかし、たまには現在のベストを一瞬で良いから出す。そんな気持ちはいつも持って居たい。

自己ベストを出すから自分の立ち位置が分かる。そうすれば妄想に囚われずに謙虚に稽古出来ますから、清々しい自分で居られる。

もっと言えば、スタミナやバネは多少落ちても、稽古で身体をまとめて行けば年々武力は上がることも、自己ベストを出してこそ実感できてくる。

番組の最後に、助教ハイパーレスキュー隊員の糸魚川さんが言われた言葉がまた良かった。曰く「リーダーは後に続く者に憧れられる存在でなくてはならない」(←たしかこんな感じです)

小さくとも武術の稽古会を主宰する者として、襟を正さねばならんですね。