我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

拝啓 十五の君へ

青ざめています・・・


支部の稽古後、足利の武道館に向かう。剣道初段の審査を受けた娘をピックアップ。早朝から緊張を強いられて疲れたようです。それくらい苦労した方が良いんです。

道中、剣道の稽古生で漫画家を目指す人の話が出る。美大を受けるための画塾に通うため、剣道の継続をどうしようか悩んでいるとか。将来表現者を目指すその子に、ワシからのエールを送ることにした。


拝啓 十五の君へ


まずねぇ、そもそもそんなこと悩んでいちゃ駄目だよ、キミィ!大体、美大と漫画は関係ねぇっつうの。美大出身の家内が言うんだから、間違いない。

そもそも、絵が好きだっちゅうことだけで漫画家になっても成功しないでしょうな。キミもそれを分かっていて、「若いうちに色々な体験を仕込んで、良い漫画を描きたい」と言っている。うん、なかなかえらいぞ!!

あまり最近の漫画誌を読まないから決め付けで申し訳ないのだが、貧弱な絵のストーリーが腐った漫画は、青白いひきこもりが描いているんじゃないか?子供にそんなもの与えるな!

おまけに画塾ってところは、下手すると一流になれなかったヤツの吹き溜まりってこともあるというんだな。わかるぞ。私も作家や芸術家志望の人間を幾人か見たことがあるが、昼夜逆転が当たり前、男女関係はぐちゃぐちゃ、勤労意欲ゼロ・・・それを芸術や文学とコジツケテいる輩なので、遠ざけることにしたもんだ。

十代までは、良い悪い、好き嫌い、白黒、強い弱い・・・をはっきりさせて生きて行く方が良い。グレーゾーンは生きて居ればいやでも覚える。そんなもんだ。ここに居るおじさんなんて、そりゃもう・・・いや、俺のことはいい(笑)。

さて、美大云々は親御さんがおっしゃっているようなのだが、大体、そんな学歴は漫画の世界に入ったら物凄く嫌われちまうんじゃないか?それより、剣道きちんとやりなさいって。

その辺のヘッポコ稽古ならともかく、せっかく練兵館で筋のいい剣道をやっているんだ。しっかりやり込んで、気合いと体力でマンガの師匠や先輩に可愛がられた方が全然良いぞ!!これは!という人にはどんどん飛び込んで行くことだ。

大体ね、一日24時間。学校が終わって画塾に行くと帰宅は何時、そうするとアレとコレはあきらめて・・・、なんて算数やるみたいな計算で“作品力”を磨けるわけないんだよ。算数からは当たり前の答えしか出て来ないでしょ?

目に見える作品の表現なんて、氷山の一角でしかない。水面下の人間力と経験の仕込みがなにより重要になって来るんじゃないの?こう言うのは複雑系の能力なんだよ。差し引きとか、せいぜい掛け算のレベルでの単純系の計算やっているようじゃアタリマエの能力しか身につかないよ。

当たり前の計算と当たり前の人生で培われた表現なんて、誰も金を出さないんだよ。読者は、非日常のエネルギーに触れるためにエンタテイメントにカネを出すんです。それを表現する人が、当たり前のストーリーで生きて務まるか?

それにね、普通の社会人の仕事にしたって、学科の成績なんて大して関係ないんだ。まず、先輩社員や上司に「やめちまえ、バカ野郎!」って怒鳴られた時点が、第一歩なんだから。堅気だってそれはアタリマエ。漫画家なんていうヤクザな商売は言わずがもなでしょ。


君は人間力を磨く機会をもっと持った方が良い。良いセンスをしているんだから、上手く育てばきっと良い表現者になるだろう。でも、所詮十代は十代なんです。経験が圧倒的に足り無い。色々な経験を積んでバンバン人間的なパワーをつけないと、表現者としてはすぐに壁にぶち当たります。食って行けないよ。

綿○某とか金○なんとかの小説なんて、1ページ読んだら「ぽい!」でしょ?ストーリーで読ませる世界には、“仕込み”が要るんです。トントン拍子の成功を狙ってもダメ。一時は成功してもいずれ行き詰まります。

君には時間があるのだから、もっと色々ぶち当たって砕ける経験をして下さい。親御さんは色々とおっしゃるだろうけれど、親の庇護下にある今こそ、将来の成功のために、仕込みをして下さい。

もしピカレスク系のネタが欲しくなったときには、遠慮なくワシを尋ねなさい(笑)

・・・あ、いや、最後の発言は冗談です。良い漫画を描いて日本の子供たちの感性を揺さぶってくれい。頑張ってくださいね。応援しています。


 武辺者より


【今日の1枚】
我が家の門のそばの朝顔の中に、ひとつだけ青いヤツがあります。他は赤紫色です(9/12 写真参照)。実は、青のヤツには、愛犬・大和号(甲斐犬・オス)が毎朝ショ○ベ○をかけているのです。そのせいで青ざめて居るのでしょうか・・・??