我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

武人、閑居して・・・

男のバイブルです!


残業原則禁止になったおかげで早く帰れるようになったものの、怪我の治療に時間を費やしていました。養生の甲斐あって、来週あたりから組手と剣道に復帰出来そうなところまで来ました。

先週の土曜日の稽古でも高木先生には脚のことを心配して頂き、恐縮の至りでありますが、そろそろ元のペースで鍛え込みが出来そうです。もっとも、先日もGW開始早々、調子の良さをいいことにハッスルし過ぎて痛い目に遭いました。じっくりとペースを戻して行きます。

高木先生曰く「大きな力を出せるようになると、パーツにかかる負荷も大きくなる。怪我とパーツを鍛えることのくりかえしで向上していく部分もある」とのこと。

これは私も同感です。二つと無い身体ですので致命傷を負うことは避けねばなりませんが、建設と破壊はある程度避けて通れない部分はある。

東京にいたころの話です。当時は東京の週4回の稽古にすべて出席して居ました。団体稽古が終って特に用事が無い時はアフターで這をやっていたのですが、先生からお声がかかり推手や時には組手のお相手を仰せつかることがよくありました。

推手でとことん絞られ、呼吸困難(大げさか?)になって膝をつく事がたびたびでした。さらに一時期、Sさんという大きな方が来られていて、このSさんと先生に連続でお願いすることもありました。

Sさんはかつてアマ相撲で活躍されていたそうで、最盛期で130キロあった肉体は太い骨格に筋肉が山盛りに載った凄いモノでした。Sさんと先生のお二人のお相手をさせて頂くと、大袈裟では無く身体が本当に悲鳴を上げたものです。

月に2回は保険の効かない治療を受けて身体を整えていましたが、その時も先生には同じこと(=建設と破壊)を言われた覚えがあります。

たしかにその通りで、私なりに随分と体が強くなったと感じました。Sさんの鍛え抜かれた巨体の凄まじい圧力と、高木先生の恐ろしくまとめ上げられた全身のパワー。これをしょっちゅう受け続けていたのですから、当然と言えば当然です。

まぁ、今から思えばハッキリ言って怪我のリスクは小さくはなかったとは思いますが、これだけの稽古は滅多に出来ないことです。身体に植え付けた財産は、稽古さえしていれば目減りしません。本当に有難い気持でいっぱいです。

・・・さて、脚の怪我で満足に動けなかった間は、思うところがあり、体幹部を中心に鍛錬を積みました。久し振りに上半身を鍛えてみると、各部のチェーンを繋げる余地がまだまだあることが分かり、喜んでいます。

残業規制で時間が取れる内に、やりたい鍛錬や稽古に時間を割いて行きたいですね。金が無いから余計なことをしないで済むし、これはもうねぇ、神様の思し召しとしか言いようがありませんよ。

小人は閑居して不善をなしちゃいますが、武人は稽古・鍛練です。残業規制、万歳!であります。


註)本日の一枚は、空手家・岸信行師範の語り下ろし『空手仙人 岸信行』です。岸師範は私が尊敬する武人のお一人です。副題の「枕にキノコが生えるまで泣け」ってのがアレですが、内容は味があってめちゃめちゃ面白いです。岸師範も澤井先生の「壊れた時計」のお話に勇気づけられたお一人だとか。