我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

ケレン味

福固め


いつものように居間で「福固め(ふくがため)」で抑え込まれてそのまま寝てしまい、先ほど起きました。

福固めとは、我が家で一番初めに飼い始めたチビ犬福の必殺技。くつろいでいると、足の間や脇の下に頭を捻じ込んで来たり、腹の上に乗っかったりして来ます。そして、その場で息を長く吐きながら体の力を抜かれると、誰も福をどけることが出来なくなってしまうという、摩訶不思議な固め技です(写真参照)。

ちなみに、福固めは今日のお題に関係ありません。

本題です。ゆうべ観たNHKハイビジョンで徳永さんのライブの模様が番組になっていたのですが、私の印象にある徳永さんとは違った感じがしました。

徳永さんは私が高校生の頃デビューしています。そのころ私は主にラジオで音楽を聴いていたせいか、彼の歌っている映像はあまり見たことがありません。

ほとんど声だけを聴いていたのですが、その頃の素朴な歌い方とハイビジョンのライブでの歌い方は、随分とかけ離れていると感じました。何と言うのか、非常に「作ったような」歌い方だな、と。

声は相変わらず非常にいいものを持っているのですが、有体に言って好感が持てませんでした。

批判してしまったついでなんでもう少し言うと、服装のセンスが「ぶー」ですな。なんだか新橋あたりで一杯ひっかけたおじさんがカラオケで歌っているみたいな格好。そしてお猿さんみたいな姿勢の悪さ。何だか悲しいものを感じました。

私は徳永さんの大ファンというわけでは無いけれど、高校から大学生時代にかけて聞いた「レイニーブルー」、「壊れかけのRadio」、「輝きながら」なんて大好きでよく歌います。だから、昔の姿に戻って頂きたいですね。

長いこと業界に居ると、良くも悪くも、皆さん歌い方が変わってくるようです。円熟して来て変わって行く方もいますが、妙な癖やケレン味を身につけて行く人の方が多いように感じます。

武術・武道の稽古でも同じことが言えます。長くやっているうちに、つまらない気取りやケレンを身につけて行く可能性はあります。

これは守・破・離の「破」や「離」とよく似ているのですが、武術の場合、手を合わせれば円熟ゆえの変貌か、それとも単にズレて来たのか分かるから分かりやすくていい。

それでも、長くやっていると周りの人も注意やアドバイスをしなくなりますし、組稽古などでも気遣って不自然な「受け」を取ってくれる場面がありますから、下手をすると「裸の王様」になってしまう。

そういう楽な稽古をしていると思わぬ場面で恥をかきます。武術が必要になる場面=緊急時に取り返しのつかない失敗をしないように、普段から身体を掛けた稽古で汗を流しておく必要がある。

徳永さんが楽をしているとはいいませんが、精神に贅肉をまとってしまわれたのかも知れません。精神に贅肉をまとうところまで登りつめたことのない私には、そんな余裕などないのですが、せいぜい気を付けることにします。