我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

大人の週末 その2 (鉄) 

水戸偕楽園にて。

以前に、高橋竹山(ちくざん)の津軽三味線の映像を見たときも、その強烈なエネルギーに気圧されるものがあった。

私見だが、竹山の場合は力強さの中にも、微妙なバチ捌きで出す振動が醸す一種の「しな」のようなものがある。それが「媚び」になることはないのだが、柔らかさを秘める。

正太郎の場合、ひたすらパワーで押す、剛直な肚(ハラ)の力を感じさせる演奏だ。それでいて、押し付けがましさがない。どこまでも自然体。その裏にどれ程の修練が隠されているのであろうか。

竹山にしても、正太郎にしても全盲で楽譜など読めないはずなのに、何故、あれだけの曲目を覚え、演奏が出来るのか?それだけで小生には「???」である。

八曲目、オリジナル曲の“希望”が奏でられた後、小休止。このお店自慢の美味しい紅茶とシフォンケーキを味わう。

紅茶を味わいながら、オーナーの先崎さんと踊正太郎氏の会話を楽しむ。

なんでも、今回のテーマ“紅の響き”は三味線の棹の素材である紅木の紅と紅茶の紅をかけたものだとか。ふむ。なんか俺まで文化人になった気がしてきた。

最後の曲は“津軽の四季”。正太郎が16歳の頃作ったオリジナル曲だ。わずか16歳の頃に、あれだけのものを作るとは・・・。約90分間、最後の最後まで圧倒されっぱなしであった。

太気拳は実戦武術である!などと力んでみても、彼の凄まじいまでの生命力に匹敵するだけの“武”を自分はこの先体現できるのだろうか?

ふっと心に浮かんできた焦り。もっともっと自分に磨きをかけねば。文化の香りあふれる水戸の街を歩きながら、改めて思い直した。

(つづく)