剛と柔

武術の上達は、剛で入って柔らかくほぐしていくか、あるいは、柔から入って芯を入れていくかのいずれかであろうと思う。

ひたすら柔を極めるという方法もあるかもしれないが、よほどの天才が恵まれた環境で育つのでない限り、この方法では現実に遣える武にはなり得ないだろう。

なんとなれば、武は己を害すべく理不尽な力を揮うものを相手にして使うものである。分かりやすく言えば、理不尽な暴力に立ち向かいうるか・・・ということですネ。そこには恐怖・苦痛・緊張との対峙は避けられない。ただただ放鬆（ほうしょう。無駄な力を抜いた状態のこと）すれば良いわけではない。

いや、敵意むき出しの相手に放鬆が出来れば最高なのだが、そうは問屋が卸さない。心と体はひとつのものであるから、心に緊張が走れば身体にも緊張が生じる。だがしかし、力めば力んだだけ心も体も居付く。居付けば動けない。動けねば暴力を前に身を全うすることは出来ない。

重圧を前に放鬆することは認識と肉体の双方からのアプローチが必要となる。そして、稽古においては心身への負荷を徐々にではあるが、確実上げていくこと。心身の基礎が出来たら「押して押して押しまくる」姿勢で稽古する時期が必要となる。それが出来て初めて武術としての柔らかさが出てくることを知らねばならない。

こういうことを言えば「私には無理！」とおっしゃる方が居ます。でも・・・世の中には生まれついての「強い人間」「賢い人間」「出来る人間」など居ないんです。努力して強くなり、賢くなり、出来るようになった人が居るだけです。

それはすなわち、一回きりの自分の人生に真摯に向き合えるか否か、ということなのだと思います。真摯に自分の人生に向き合う方たちの想いに応えられるような、そんな武道場を運営したいと考えています。

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