「意図」と「前提」を踏まえて練る
正しい動きは無限にあり、同様に間違った動きも無限にある。武術の技法だけではなく、行為の正否は、その意図と前提如何による。
以前、人を介してある武道の先生をご紹介いただき、組手(試合形式の自由攻防の稽古)交流をしたことがある。
多少の組討ちあり、寝技なし、ある程度は撃ち合うし当てるが、威力はコントロールして損傷を目的としない、という取り決めをして立ち合った。
器用な人ではあったが、戦うことの意味が分かっていない「所作比べ」名人だとすぐに分かったので、距離詰めて歩法と用いて位置取りと前捌きで封殺して、あまり突き蹴りを出さずにやり過ごした。
その先生「太氣拳は守りが主体なのですね、もっと積極的に攻めましょう」などと指導して来られたのでさすがに温厚な私も(以下自粛w)。で、この方、急に態度が変わってお昼ゴチになる運びとなりました。
早く帰りたかったのだけど、知人の紹介でもあったので人の好い私は、お付き合いすることに。色々と質問されたのだけど、その先生、太氣拳は後屈立ち系だから云々と持論を展開される。
うるせーなーと思いつつも人が良い私は
「あなたの言う後屈立ちの定義は分からないけど、あなたが見せてくださっているのが後屈立ちだとするならば、太氣拳は後屈立ち系ではないですよ」
とややシビアな態度で指摘した。
何でもこの人、以前、太氣拳を稽古する人と手合わせしたと。そしてその人自身が太氣拳は後屈立ち系だと言っていたし、後ろ足に体重かけていた、と主張された。因みにその時は太氣拳の人をボコボコにしたらしい。
どうしても後屈立ちにこだわりたい先生。まぁ後ろ足のタメ・踏み込みは大切ですよ、と一応メシ代の分くらいのコメントはして、少しだけ実技も見せた。
するとその先生、「あぁやっぱり後屈立ち系ですよね~」と人の話をまったく聞かず、私がやった動きのマネらしい動きをしながら、一人で納得していた(俺が苦手なタイプだ)。
同じ言葉を使えば同じ動きになると思っている、すなわち動きを国語として理解してしまう人が凄くたくさんいるのは知っていたが、その典型のようなご仁だった。
こう言っては悪いけれど、私がお見せした「後ろ足のタメ」云々は、少年部でも出来るレベルの後屈立ちの延長線上には、ない。
立つ・歩くということを技化する訓練を明確な意識をもって行っていないと、絶対にできない事だ。ただし、明確な意識をもって地道に取り組めば、通常の生活ができる人ならば、必ずできるようになる。
武道家も一般人も体としての素材は同じ。武道的身体を明確な意識をもって創り上げているか否か。ちがいはそこにある。
念のために言っておくと、後屈立ちと一口にいっても色々な形態とレベルがあると思うので、後屈立ちが良い・悪いという一般論の話はしない。〇〇立ちという名称が問題なのではなく、上述したように武道的身体になっているか否か、が大事。
で、厳しいことを言えば、武道と名の付くものをやれば武道的身体が出来るのか、と言えばさにあらず。素人の身体のまま技と呼ばれるものを行い、体力トレーニングをしているだけ、というケースも多々ある。
残念ながら、そのような稽古では運動的素材がすぐれた後輩に、先輩が簡単に抜かれるという現象が普通に起こる。
おそらくではあるが、この先生に簡単にやられた太氣拳の人も、武道的身体を練るという稽古が希薄だったのだろう。
色々と話が飛んだが、自分のやっていること・やりたいことの意味合いを明確にして、稽古の意図と前提を踏まえて取り組まねば、時間だけが過ぎていくことになる。
太氣拳尚武館は、太氣至誠拳法(通称・太氣拳)を学ぶ武術・武道の道場です。武道初心者はもちろんのこと、武術・武道・格闘技で伸び悩んでおられる中級者以上の方も歓迎いたします。また、護身・健身(健康づくり)目的の方の参加もお待ちしております。稽古会場:小山市・栃木市・宇都宮市・上三川町。神戸市(支部)詳細は:http://taikiken-tochigi.jp/practice/
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<太氣拳とは>
中国拳法の流れを汲む武術。創始者・澤井健一が立禅と命名した「ただ立つだけ」の独特の鍛練法を核とする。
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