我が拳客商売

拳の研究・指導を生業に据えての世渡りの中で起こる悲喜こもごもを、筆の赴くままに書き綴っております

太氣拳を立体的に捉える〜その1、華佗五禽戯 - 序

*太氣拳を立体的に捉える〜その1、華佗五禽戯 - 序

太氣拳をお伝えする者の端くれとして、太氣拳とは何ぞや?という大きなテーマについて様々な角度から考察してみようと思い立った。思い立ったら吉日!ということで、書いてみるど〜。

もちろん、私は発展途上の身ゆえ「完全無欠の太氣拳の定義」などというものは書く立場には、ない。しかしながら練士五段を允許された際の許状に「抑々太氣拳の真髄は、形意拳に発祥 王薌斎先生の大成拳の流れを如実に修業体得し・・・」とある以上、「体得」はともかくとしても、其処へ向かうための「考察」くらいはして「発展途上の自分が捉える太氣拳」を、せめて後輩や後進、さらには世間的にはマイナーなこの拳法に少しでも興味を抱いてくださる方に、実技と理を通してお伝えする、と。それくらいは出来なければ、「太氣拳の練士なんです」とかは間違っても言えないでしょう。・・・という、少し挑発的とも取られかねないこと言ってみました(でもね〜空手だろうが、剣道だろうが、合気道だろうが・・・五段ともなれば、それくらいは普通ではないかと思いますよ)。

・・・というわけで、前振り長かったけれど本題入ります。今回のテーマは華佗五禽戯

漢代にさかのぼるが、華佗は「五禽の戯」を編み出した。これは技撃の本質である(王薌斎 『意拳正軌』序文より)

先月の合宿では初日の午前の稽古にて焦国瑞伝『華佗五禽戯〜熊戯』をお伝えしました。五禽戯は、華佗が伝えたとされる原型は今となっては謎になっているようで、今流布している五禽戯は、様々な練功家が文献を頼りにそれぞれの見解に基づいて作られているようです。

〜焦国瑞老師と気功養生学〜
焦国瑞先生は、武と医術の家系に生まれ、長じて中医研究院にて中医学と気功のスペシャリストとして、気功養生学を確立された方です。気功養生学は胡耀貞老師の心意内功を核として、様々な要素を織り込んで確立された体系です。ここでいう「様々な要素」の中に、王薌斎老師の意拳もふんだんに含まれています。

私は気功養生学を星野稔先生に就いて学んでいます。
焦老師は、中医研究院の命を受けて生前の王薌斎老師に師事されて站樁(立禅)を専らに学んだそうです。王薌斎先生も時代背景もあり、当時は武術の看板ではなく養生法として站樁を教えられていたのは、有名な話です。焦先生は晩年の王薌斎先生に就き、「一日中站樁だけ」の修行を二年間積まれたそうです。
名人・胡耀貞に心意内功を学んだ焦先生は、王薌斎老師に学ぶのはあまり気が進まなかったそうですが、接見がかなうと胡耀貞老師をはるかに凌ぐ力量と見識に驚嘆を覚え、むさぼるように学んだとのこと(星野先生談)。

王薌斎先生は「丹田」「経絡」「練丹」「周天功」・・・といった従来の気功・内功の概念を否定され、極力科学的な考えをされたそうです。その部分だけ見ると胡耀貞の理論と齟齬があるように思われますが、力量に優る王薌斎に学んでなお、焦老師が胡耀貞理論を主軸に据えていたということは、両者の理論の内実が同質のものであったのだろうと、拝察します。実際に星野先生より実技を学んでみて、太氣拳を学んでいるように私は感じました。養生気功っていうけれど、これ、技撃じゃん!というのが、偽らざる感想です。

で、五禽戯なのですが・・・疲れたので、つづきは次回ね

(つづく)